◆◇ 法学館憲法研究所Journal http://www.jicl.jp/ ◇◆
_____________________2007年9月3日号(第173号) 【シネマDE憲法】として映画『シッコ』を掲載しました。医療制度の問題 点を抉る内容となっています。憲法に基づく社会保障制度を考えてみたいと 思います。 憲法情報Now<シネマ・DE・憲法> 銃社会を扱った「ボウリンング・フォー・コロンバイン」、ブッシュ大統領とアルカイダのつながりやイラク戦争を描いた「華氏911」等、母国アメリカの政治社会の暗黒の部分を告発し続けるマイケル・ムーア監督。今回は医療問題をドキュメンタリー映画にしました。原題の『Sicko』とは、俗語で「いかれた奴」という意味で、「アイツ(アメリカの医療制度)は『ビョーキ』だよ」とでもいうべきでしょうか。 世界一豊かな国アメリカの医療制度。制度の被害者たちが次々と登場して悲惨な体験を語ります。冒頭、仕事中の事故で指を2本切断された中年の大工。健康保険を持っていない彼に、医師は「中指をくっつけるのは6万ドル(約700万円)、薬指は1.2万ドル(約140万円)」と。大工は、結婚指輪をはめる薬指だけを選びました。アメリカは、先進国で唯一、全国民を対象にした公的医療保険制度が存在しない国です。6人に1人の4700万人が無保険者で、そのため毎年1万8000人が死亡しています。 民間保険会社の医療保険に加入している人も安心できません。最大の利潤を追求する営利優先の保険会社は、さまざまな理由をつけて保険治療を拒否します。救急車を呼んでも「事前の連絡がない」。医師が薦めても「試験段階の医療だ」。「あなたの年齢でそのガンはありえない」。「標準より太り過ぎ、やせ過ぎだ」。保険会社の審査医は、拒否率が高いほど報酬が高いと証言しています。 保険加入のいかんにかかわらず、治療を受けられず死亡する人、高額の治療を受けて破産する人はおびただしい数に上ります。破産の原因の第2位は医l療費破産です。ムーア監督は、「利益を出すには、治療費を減らすこと、それに有利な法律を作ることだ」という、医療関係者と彼らから多額の献金を受け取り天下る政治家の癒着を告発しています。 では、他の国はどうなっているのだろう?監督はヨーロッパに飛びます。イギリスでは、低額の国民保険料で無料の治療が受けられます。フランスでは国民でなくても治療費は一律の20ユーロ。長期患者の自己負担はゼロです。そして隣国カナダでは医療費は基本的に無料。アメリカで120ドルの薬はキューバでは5ドル。生命を守り医療を受けられることを基本的人権ととらえて国家で保障している国々との違いが浮き彫りにされます。 日本の医療は、近年はアメリカ型を目指しています。毎年アメリカから出される日本の経済や社会の構造に関する広範な対日要望書では、医療制度「改革」も重要な課題とされ、ビジネスチャンスを広げる「構造改革」「民営化」が促されています。それに沿って、医療費の負担率のアップ、保険外治療を拡大する「混合診療」の本格的な導入、株式会社による病院経営等々が実施され、あるいは計画されています。また、貧困化で国民健康保険料が支払えず、保険証を取り上げられた医療難民が激増しています。 生存権や社会保障を受ける権利を保障している日本は、憲法ではヨーロッパ型の福祉国家を目指しています。しかし、実際に進められているのはアメリカ型システムへの接近です。 どちらの道を選択を選択するのか、映画は私たちにも決断を迫っているように思われます。 【映画情報】 製作:2007年 アメリカ 監督・脚本・製作:マイケル・ムーア 原題:Sicko 時間:123分 出演:マイケル・ムーア 上映館:全国で公開中 公式サイト 転載元: おばあちゃんの鐘馗(しょうき) |
今日はせっかくの休日なのに、末娘が試合のため早朝よりお弁当作り・・・・。7時に娘が出た後、二度寝したかったけど(なにしろこの1週間の平均睡眠時間が5時間をきっていましたからね)2階はもはや暑くて暑くて・・・・。低血圧なので、このままだと家で倒れこんでいるだけの半日になりそうだと思ったので、とにかく体を動かしさえすればなんとかなるはず、とばかりに、眠気覚ましに思い切って一人で外出。マイケル・ムーア監督がアメリカの医療問題をテーマにして、またもや物議をかもした「シッコ Sicko」を観てきました。
恐ろしいドキュメンタリーでした。そんじょそこらのホラーなんてメじゃありません。なにせ本物の生命がかかっているんですから。私が見に行ったときは朝一番の回だったからか人影まばら・・・というか10人しか客がいなかったんだけど、この映画はぜひ見るべきです。思いテーマだけど、さすがjに上手なつくりで2時間余りを全く飽きさせません。重苦しい気分だけで終わるのではなく、告発の後には良識の勝利と、希望がほのかに見えるような結びになっています。しかも、今の日本の状況、映画のあおり文句じゃないけど、全く他人事ではありません。危ないです。以下、ネタバレバレでご紹介します。
映画の冒頭は、事故にあってパッカリと裂けた自分の膝の傷口を自分で縫う男性の映像。あ~イタイ!もちろん彼は医師でも看護師などの医療専門職でもない。医療保険に入っていないから、病院にいくことができないのです。もう一人、無保険の男性の事例。電動鋸で左手の中指と薬指を切り落としてしまい病院へ。医師は言います。中指を継げば約720万円、薬指を継げば約144万円、どちらを選びますか・・・?と。彼は薬指を選び、お金さえあれば継ぐことが可能だった中指は欠損したまま・・・。先進国中唯一国民皆保険の制度がないアメリカ合衆国では6人に一人が無保険者。それは民間の医療保険に加入したくても審査が厳しく、支払いが余りにも高額だから。q(`O´)p
でもこの映画が告発するのは、無保険者の問題ではなく、民間の医療保険による給付金支払い拒否(曲がりなりにも国民保険制度のある日本の尺度で考えると混乱します。日本の民間医療保険は、あくまで公的健康保険の補助的なもの。アメリカは公的な医療保険が全くない状況の中での民間の医療保険です)です。
マイケル・ムーア監督はネットを使って保険会社とのトラブル事例を収集し(とんでもないほど多量の事例が集まったらしい)、その一部を紹介します。夫婦揃って十分な職歴を持っていたにも拘らず、慢性の持病を抱えてしまったために破産、持ち家を処分し、娘の家の地下室へ転がり込まねばならなくなった60代の夫婦。夫婦の慢性疾患をこの医療保険会社はカバーしてくれないのです。交通事故で気を失い、救急車で病院へ運ばれた若い女性に、後日保険会社から「事前申請をせずに利用した救急車の料金は保険ではまかなえない」旨の連絡が。病院が示した治療方針に保険会社が支払いを同意しなかった数々の事例。脳腫瘍の疑いのためのMRI検査、癌の化学治療、骨髄移植・・・それらの検査や治療を「不要だ」「実験的だ」「22歳では癌にかかるのに若すぎる」などと判断するのは保険会社で、保険会社から治療費が支払われなければ高額の治療は受けられない・・・。治療費さえ捻出できればあたら助かる命がどれだけ失われてきたことか・・・・。保険会社に雇用された医師らは支払い拒否のサインが多ければ多いほどボーナスがつくような仕組みになっていると、もと保険会社勤務の医師が贖罪のようにのべる・・・。本人も忘れている軽微な既往を申告しなかったとして、保険金の返還を求められた女性もいる。急病の娘が救急車で運ばれたのが保険会社の系列の病院でなかったため、治療を受けさせてもらえず手遅れになってしまったと語る母親・・・。自由と民主主義の国アメリカでは、診療もしていない保険会社が治療方針を決めるのでしょうか。国民には病院を選ぶ自由もないの?面白かったのは、娘の耳の疾患について、右側しか手術を認めてもらえなかった父親の事例。彼は保険会社に手紙を書きます、「今度マイケル・ムーア監督が保険会社についてのドキュメンタリーを作るために、保険金の不払いトラブル事例を集めている。私もこの件をレポートするつもりである。貴社のCEOに映画出演経験はおありか?」というような。すると即座に左耳の手術の許可も下りたとか・・・。
アメリカにも国民皆保険制度を、と言った政治家がないわけではないようです。近年ではヒラリー・クリントンさん。けれども保守系の議員たちからモーレツなネガティヴ・キャンペーンを受けます。社会主義的であると。医療を国に管理されたいのか、と。やがて彼女は黙らされ、関係者からの献金も受け取っています。(もっともこの「SiCKO」公開後は、来年の大統領選挙に向けて、ヒラリーさんをはじめ何人かの政治家が国民皆保険制度の実施を唱え始めているようですが)。
ミシガン州から川1本越えてカナダに行くと医療費はすべて無料。イギリスでもフランスでも・・・。西側自由主義諸国の健康保険制度とその考え方を、管理国家的ではないのかと国民皆保険制度に懐疑的なアメリカ人にもわかりやすく、ムーア監督は伝えます。カナダの人、イギリスの人、フランスの人・・・・色々な人へのインタビューにそれぞれ説得力がありました。イギリスで5本の指先をすべて電ノコで落とした男性の指を24時間かけて繋いだチームにいた医師が、中指か薬指かを選ばされたアメリカの事例を聞いて、イギリスの医師でよかったと答えていたのが印象的です。イギリスに比べれば不十分に思える日本の医療制度ですが、それでも日本の医師でも同じことを思うでしょうね。
さて、アメリカでは9.11の悲惨な現場でレスキュー・ボランティアとして献身した、“英雄”である消防士・救命士たちがそのために体を壊したのに何の保障もなく、十分な医療を受けられずに苦しんでいる実情があります。一方9.11テロの容疑者たちはグアンタナモ収容所で十分なメディカル・ケアを受けている・・・・。
そして物議をかもしたシーン。ムーア監督はこの映画で事例を語った“医療難民”ともいうべき人々を連れてグアンタナモ収容所へ向かう。そして海上から叫ぶ。「ここに9.11レスキューがいる。彼らにテロリストたちと同等の医療を受させてやって欲しい。」もちろん反応はありません。病人を連れているムーア監督は、しかたなく(?)キューバ領内で病院をさがします。ここは第三世界だから、と医療水準を危ぶみながら・・・。キューバと言えばアメリカの仮想敵国・・・の「仮想」ということばをとっても良いぐらいの国。でもここで彼らは、アメリカにいるよりも高度な医療をほぼ無料で受けることが出来ました。アメリカで1本1万4千円した喘息の吸入薬の小瓶が約6円。チェ・ゲバラの娘へのインタビューもあります。
う~む(-_-#)です。
日本でも国民保険料が払えなくて無保険の人が増えていると聞きます。私は勤め人ですから社保本人ですが、就職した頃は本人無料だったのに、いまは3割負担。出来るだけ医療費を賭けないために受診を控える人も増えているのではないでしょうか。お金の切れ目が命の切れ目、事故にあっても救急車は有料。なんてことになったらたまりません。アメリカの保険会社は虎視眈々と日本という市場を狙っているとも言われてますし、私たち日本人もフランス人を見習って、自分たちの命と子どもたちの未来を守るために、自ら行動をすべきなんじゃないのかしら・・・と思いました。「シッコ Sicko」を観て、日本の医療保険・社会保障制度の変遷を見て、その時どの議員(政党)がどんな発言をしてどのように行動(賛成・反対も含め)をとったか、今後医療制度・社会保障をどうしようとしているのか、ちゃんと知って考えて投票もしないと危険です。それから、映画の中でも各国で行われていると言われている「予防医学」。日本でもメタボ対策として取り入れられつつありますが、そのためには労働時間を短縮して、一駅歩こうとかジムに寄ろうとか思える時間も作って欲しいもんです。もし勤務時間が本当に9時から5時まで、うち1時間昼休み・・・・、であったら日本人の国民病、糖尿病も絶対減ると思いますけどね。
それにしてもアメリカの保険会社のやり口の悪辣なことと言ったら(ノー"ー)ノ ┫ ゜・∵。もっと怒れ!中流アメリカ人たちよ!・・・・わたしのがん保険も外資系なんだけど心配になってきたなぁ。。ゞ(+ヘ+)``。。。保険会社も製薬会社もロビイストを通じて国会議員たち(共和党だけでなく民主党の議員にも)に献金をし、自分たちに有利な制度・法案を維持したり作ったり・・・。これに貢献した議員たちは関連企業に上手に天下り・・・・え~~っ!日本の構図と似てるやん!!ちょっとぉ。痛くても苦しくても病院に行けない、保険がおりるかビクビクしながら治療をしないといけない、破産か命か選べ!(むしろ破産しても払えないかも)・・・なんて!ヽ(`⌒´メ)ノそんな社会はゴメンです!
ちょっと、2年半前の猫の闘病生活を思い出しましたよ。腎臓リンパ腫で、発見から死んでしまうまで2ヶ月の治療費(若猫だったので進行が著しく早く、手の施し様がほとんどないとのことでしたので、入院せず・手術せず・化学療法せず・・・、つまり、治療と言ってもほとんどは一日でも長く生きながらえさせるための栄養補給だけの状態でも)が20万円を軽く超えました。こんな状態になるともう獣医になんてかけずに放置する人、捨てていく人も多いそうです。ペット保険があるけど、掛け金が高いしいざという時に給付されないトラブル事例も多いとか・・・(゚ロ゚;ノ)ノ。ここから類推して人間なら??どうなる??
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