暴走する中国軍部
 米国議会中国問題特別委員会の対中「報告書」で、委員のラリー・ウォーツェル博士は、2007年1月に行われた中国の通信衛星攻撃システム実験ASATが、中国の国家主席.胡錦涛と温家宝首相の「知らぬ間」に、軍部の「独走」の下に行われた事を指摘している。

 これは、中国政府の政権中枢が軍部と地方政府に対する支配力、コントロール能力を喪失しつつある事、中国が複数の地方政府に「空中分解」する端緒、亀裂が起こり始めている事を示している。

 この暴走した軍部は米国への留学帰国組であり、中国政府の複数地方政府への「空中分解政策」が米国諜報組織CIA等の「工作」であることを、これは示している。

 一方、中国の4大金融機関である中国銀行、中国農業銀行、中国工商銀行、中国建設銀行の不良債権は合計で9000億ドル、融資額全体の40%に達している。これは先進国の銀行であれば既に、はるか昔に倒産している水準であり、米国CIAと直結したブッシュ大統領一族の経営する銀行、シティバンク、ゴールドマンサックスは中国の金融恐慌を「待ち望み」、その恐慌の規模を拡大するために、さらにこの崩壊寸前の4大銀行に資金の融資=「貸し増し」を繰り返している。

 日本のバブル崩壊で明らかなように、恐慌の規模が大きい程、中国の土地、企業の資産価値は激減し、ロックフェラー傘下の米国銀行シティバンク、ゴールドマンサックスは、より安価に容易に中国経済全体への支配力を強化出来る事になる。

 この中国発の恐慌により、莫大な債務を抱えた先進各国政府は、一気に国家破産へと坂道を転がり落ち始め、中国は地方割拠の時代が到来し、そして米国「直属の中国地方政府」が出現する可能性が出てくる。

 しかし恐慌で貧困が激化した中国人の不満は、必ず日本への不満に「はけ口」を見出す。イラク問題で明らかな様に、米国が全てをコントロール可能という神話は既に崩壊している。その時米国が「日本の味方」という保証も存在しない。

 イラクの金融中枢はシティバンクが握り、すでに道路建設等の復興事業、原油開発投資でシティバンクは莫大な利益を上げているが、イラク全体が戦乱に明け暮れ社会が大混乱し国家が崩壊しても、シティバンクにはそのような問題は何等関係が無く、イラク投資で「着実な利益」を上げ続けている。

 イラクと同様の事態が中国に起これば、ミャンマー、ナイジェリア等の軍事政権と同様の性格を持った中国地方政府と一体化した米国金融機関が、中国中央政府の「監視から自由になり」資源の略奪=投資、開発が大々的に可能となる。

 一方、米国金融機関との一体化が行われず、米国の投資の「おこぼれ」から排除された資源の無い地域では、貧困への不満が軍事行動として爆発する。その爆発は必ず日本に向かう。国家統一が崩壊したユーゴスラビアで、産業の発達したクロアチアがドイツ経済圏に組み込まれ、豊かさの「おこぼれ」を享受した一方、排除されたセルビアが貧困への怒りから戦争国家となり、イスラム教徒等に対し虐殺を始めた事と事態は似ている。

 セルビアは欧米諸国の軍事産業から兵器を購入し、その兵器でイスラム教徒から富を略奪し、その奪った富の一部を欧米軍事産業に兵器代金として支払い、残りをセルビアの富裕層の「豊かな生活資金源」とした。

 国家統一の崩壊により「豊かさのおこぼれ」から排除された貧しい地域は、こうした「戦争ビジネス」により自分達の「豊かさ」を維持しようとする。これが民族紛争の「正体」である。

 セルビアの独裁者ミロシェビッチに兵器を販売していたキッシンジャー・アソシエーツ社は、既に中国・ミャンマー国境で「対立する様々な民族」に根を張り巡らせて居る(注1)。

 中国に恐慌が起きる時、暴発した貧しい地域の軍部は日本攻撃に向かう。

 中国精密機械輸出入公司CPMIECが公表した中国の最新鋭ミサイルP12の誘導システムは世界最新鋭であり、日本が高額な費用を出し、現在装備し始めているパトリオット・ミサイルでは、迎撃も追い付く事さえも不可能である。このミサイルに搭載される核弾頭は、日本の郵便貯金の資金で製造される事になる(注2)。

 中国の各地方政府と.政治・経済・金融・軍事の、特に経済と軍隊の「キメの細かい」交流、むしろ交流などという甘い物ではない「一体化」戦略を、日本は現在から採用し、対中国戦略を根本的に改めないと日本は国家存亡の危機に立たされる事になる。中国、北朝鮮の欠陥を「非難していれば足りる」等という生やさしい事態では毛頭無い。


※注1・・ミャンマー、ナイジェリア問題については、拙稿「世界中に乱立する軍事独裁政権の仕組み」、及び「ミャンマーの軍事政権の背後に居るのは誰か?」を参照。

注2・・郵便局資金による中国の核兵器開発問題については、拙稿「郵便局=北朝鮮」を参照