都立高校の校長は偏見と民主主義否定の巨大組織に対して、愛媛の現職警官は金に塗れた巨大ピラミッド組織への抵抗が新聞紙面やテレビで紹介された。
「東京都教育委員会が都立学校の職員会議で挙手や採決を禁じた通知に、都立三鷹高校の土肥信雄校長(59)が『現場の言論の自由が失われている』と撤回を求めている。都立高校の改革に現職校長が異議を申し立てるのは異例だが、都教委は『方針を変えるつもりはない』としている。
通知は06年の『学校経営の適正化について』。『職員会議を中心とした学校運営からの脱却』を掲げ、校長の意思決定に影響を与えないよう、職員会議での挙手や採決で教職員の意向をはかるのを『不適切であり、行わないこと』とした。翌年、通知が守れていないとして4校の校長を厳重注意した。
これに対し、土肥校長は『教員に何を言っても仕方がないという空気が広がり、職員会議でほとんど意見が出なくなった。生徒に日々接する教員の声が直接反映されないと、活性化につながらない』と昨年秋以降、校長連絡会などで通知の撤回を求めてきた。自校では職員会議で多くの教員に発言を求め、意思決定の参考にしているという。
土肥校長は東京大学卒。学生の頃は東大紛争の時代で、クラス討論や集会に参加。商社に就職後、『平等や平和主義を生徒と考える仕事を』と免許をとって高校の政治経済の教師になり、02年から校長に。『都教委は校長主導といいながら、校長を自らのロボットにしている。民主主義を教える教育の世界で言論の自由がないのは許されない』と語る。
都立校の校長の一人は『土肥校長の言う通りだが、教職員組合に決定権を握られると困る。都教委か組合かと言われれば、多くの校長は都教委につくしかない』と話す。
都立高校の保護者や教員、市民らでつくる『自由の風ネットワーク』は土肥校長の主張を5月に入って知り、『教育者としての信念を貫かれる校長先生に敬意を表する』と校長を支援し、通知に反対する署名活動を開始。1200人を超えたという。それを21日午後、都教委に渡し、通知の撤回を求める予定だ」と。(
asahi.com2008年5月21日付け)
この3月に東京都立三鷹高校校長を定年退職し、最後の教え子たちから卒業証書をもらった。「『土肥信雄 右は教育委員会の弾圧にも負けず本校所定の課程を修了したことを証する 58期卒業生一同』。離任式でのあいさつの後、卒業生が何人か駆け寄って手渡してくれた。私の宝物です」。
「僕(土肥信雄)自身、密告によって教育長から発言をやめろと脅迫的に迫られたことがあるのです。一つは、06年に東京地裁が学校現場での日の丸・君が代の強要は違憲だとの判決を下したとき、教員とともに喜んだということ。もう一つは、当時、東京都教育委員だった棋士の米長邦雄さんを批判したということ・・
神津高校や三鷹高校では常に、教育が民主的でなければ生徒も民主的な考えをもてないし、国家も民主的になれないのは、戦前を見れば明らかだと教員たちに言っていました。だから、職員会議でも自由に意見を言ってほしい、ただし責任を負うのは校長だから、最終的な判断は僕がする、と。・・
都教委は学校をピラミッド型の組織にして上意下達の徹底を狙っています。校長は上からの指示を素通りさせるだけのロボットになり、生徒と向き合うはずの教員も、生徒のことより校長の顔色をうかがうことになる。本当はピラミッドの頂点にいなければならないはずの生徒が、最もボトム(底)に置かれてしまうのです」(
朝日新聞5月9日付け朝刊『職員会議の挙手・採決禁止は言論統制だ』より)
「愛媛県警現職警官 勇気ある告発」(しんぶん赤旗2005年2月26日付け)で、「偽造領収書が昇任の踏み絵」であることを報道した。
「『裏金に手を染めなかった』という誇りを持つ現職警察官、愛媛県警の仙波敏郎(せんば・としろう)巡査部長(56)が告発した同県警の『裏金づくり』。これまで『不正は一部』としてきた愛媛県警の対応を根本からひっくり返しました。全国の警察の裏金追及にも大きな影響を与えるこの告発を追跡しました。
(警察裏金問題をめぐって話し合う(右から)原田宏二・元北海道警釧路方面本部長と仙波氏=22日、松山市)
愛媛県警の裏金問題が発覚したのは昨年五月。『(問題になった)大洲署以外で不正はない』というのが県警の結論でした。
それをひっくり返したのが現職警官、仙波氏の告発会見。一月二十日、『おまえが会見したら県警は一年間は立ち上がれない』との県警幹部の説得を振り切ってのものでした。
『三十八年の間、警察生活の中で見たこと聞いたこと、そして自分の体験にもとづく真実を話します』と切り出した仙波氏。それは、初の現職警官告発として全国の警察組織に衝撃を与えました。
▽一九七三年から九五年三月まで勤務した七つの警察署で年平均二回、毎回三人分のニセ領収書づくりの依頼を受けたが、断った
▽捜査員が協力者に謝礼を払ったことは聞いたことがない
▽カラ出張という方法で出張旅費の一部も裏金化され、幹部の飲食費にあてられていた そしてこうも証言しました。
『偽造領収書の作成は警察官が昇任する際の〔踏み絵〕として半ば強制されており、これを書かない限り上級へは昇任できない仕組みだ』 仙波氏は二十四歳で巡査部長に昇任。その後、筆記試験ではトップに近い成績を収めても三十二年間にわたって昇任する機会は与えられませんでした。
仙波氏の告発はただ裏金の暴露が目的ではありませんでした。
報告集会で仙波氏は語りました。
『私が裏金の件で一番残念に思うのは正しい知識、能力のある者が幹部にいないことです。裏金が横行するとまともな能力のある者が芽をつまれてしまう』
『志をもって警察学校にはいっても卒業した瞬間に(裏金問題で)グラッと崩れる。現実を見るんです。五十歳をすぎて(ニセ)領収書を書かずにおれるのは愛媛県下で二人しかいないんです』 仙波氏は裏金問題の一方で、犯罪検挙率が下がってきていることも指摘します。警察が好きで警察をよくしたい、というのが告発の最大の動機なのです。
県警は告発後、仙波氏の鉄道警察隊から通信指令室主任への配置転換を命令しますが、他方、〇四年度の報償費の執行額も当初予算の半分以下にとどまる見通しであることなども明らかになりました。その影響はしだいに出ています。」と。
テレビ朝日の「ドキュメンタリ宣言」(5月11日夜7時放映)で、仙波氏の戦いを潰そうとする県警組織のイジメと応援する市民を描いた。
「仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く『警察
裏金告発の行方』」で次のように解説している。
http://wrs.search.yahoo.co.jp/S=2114736003/K=%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E6%9C%9D%E6%97%A5+%E8%A3%8F%E9%87%91%E5%91%8A%E7%99%BA/v=2/SID=w/TID=jp0006_jp0006/l=WS1/R=1/wdm=0/IPC=jp/ln=ja/H=0/;_ylt=A3yTKi6s4AhKItcAfTyDTwx.;_ylu=X3oDMTFjaXZxMHM2BGNvbG「
【3分でわかる 仙波敏郎氏の闘いの経緯】
1968年3月
仙波敏郎さん、愛媛県警の警察官となる。警察学校に1番で入校、初任科補修を首席で卒業。
1973年7月
仙波さんは同期の最短で巡査部長昇任試験に合格。その後35年間巡査部長という警察官は他にはいない。
1973年8月
仙波さん、三島警察署赴任。その日に裏金づくりの領収書作成協力を拒否。署長と対立して駐在に飛ばされる。以後、愛媛県内の警察署・駐在を人工衛星のように回され続けることになる。
1979年
昇任試験の面接で、「領収書を偽造しなければ警部補には昇任しない」と言い渡され、仙波さんはその後の昇任をあきらめる。
1995年
松山中央消防署のレンジャー部隊にいた仙波さんの長男が、横暴な消防署長を過剰防衛で刺殺。仙波さんは妻と自殺を決意するが、次男の説得で思いとどまる。長男は裁判で争うが、計画殺人と認定されて12年の刑が確定する。
2001年仙波さんの妻ががんで早世する。
2004年 1月 大洲署の会計課長が酔っぱらい運転で人身事故を起こし、諭旨免職となる。
5/31 会計課長のリークにより、テレビ愛媛が大洲署で捜査協力者のニセ領収書が使われたことを伝える。
9/17 県警が最終報告書を公表。ニセ領収書を使った捜査協力者への謝礼の支払いは、107件の30万7000円で、会計処理上の問題はあったものの、使途は適正だったとした。ニセ領収書作りのために、飲食店名のゴム印まで用意していたが、誰がそれを作ったのかは不明のまま。また、大洲署以外に不正な事例はない、と強調した。
10/14 テレビ報道を受けて、県の特別監査が始まる。しかし、監査対象文書は黒く塗りつぶされ、聞き取り調査に上司が同席するなどしたため、疑惑隠し、監査妨害の批判が起きる。
11/18 県警の玄関先で偶然、息子の事件の弁護士(大洲署の不正を追及していた)と出会った仙波さんは、「裏金の実名告発」を依頼され、その場で承諾する。
2005年
1月半ば 仙波さんの告発を察知した県警は、仙波さんの尾行を始める。
1/19 翌日の会見を前に、県警は深更まで仙波さんに説得工作を行う。その際、拉致を匂わせる。県警を出た仙波さんを県警は2台の覆面で尾行するが、仙波さんは尾行を巻いてホテルに逃げ込む。
1/20 仙波さんが、「県警において、ニセ領収書やカラ出張で組織的に裏金が作られ、幹部が私腹を肥やしてきた」と、記者会見で衝撃告発。即、県警が仙波さんの拳銃を没収。
1/24 仙波さんに地域課通信指令室への配置換え内示。27日、発令。
2/4 仙波さんの同級生である東玲治氏を中心に「仙波さんを支える会」が発足。東玲治氏はこの後、仙波さんと伴走し、楯となって仙波さんを守り続ける。また70名の仙波弁護団を結成する。
2/10 仙波さんが国家賠償請求訴訟を起こす。
2/23 仙波さんが人事委員会に不服申し立て。この後3年間に渡り、裁判と不服審査が続く。
2006年3/7
愛媛県警捜査1課勤務の警部の私物パソコンが、暴露ウィルスに感染、大量の捜査資料がネットに流出。捜査協力費の控えが流出する。仙波弁護団が確認してみると、捜査協力を行ったとされている誰も、警察から協力費を受け取っていなかった。警察の裏金づくりの証拠の一端が明らかになった。
6/7
人事委員会が仙波さんの「配転処分取り消し」の裁決。
6/13 仙波さん、鉄道警察隊に復帰。1年4ヶ月ぶりにJRの駅頭に立つ
2007年 9/11
仙波さんの国賠訴訟で、松山地裁が勝訴判決。判決は、仙波さんの異動の不当性、県警の異動への組織的関与、裏金の実在性を認定する。
9/25
県が国賠訴訟判決を不服として、控訴の手続きを取る。
2008年
9/30
国賠訴訟控訴審判決が高松高裁であり、松山地裁で敗訴した県の控訴を棄却、再び100万円の損害賠償金全額の支払いが命じられた
10/6 愛媛県警の廣田耕一本部長は、県議会・警察委員会で国賠訴訟控訴審敗訴判決を受け、「上告断念」を表明、仙波さんの勝訴が確定した。
10/23
東玲治氏が狭心症で他界していたことが確認される。
2009年
3/31
仙波敏郎氏定年退職、しかし退職金額は最低額であった。
まったく信じがたいことですが、全国の警察では組織をあげて税金を横領しています。その金額は年間100億円規模とも考えられます。これが放置されてきたのは、27万人の警察官の多くが、実際に領収書を偽造して巨額の裏金をつくっているにもかかわらず、全員が口をつぐんできたからです。なんと大多数の警察官は犯罪者なのです。
愛媛県警の仙波敏郎巡査部長は、現職警察官としてただひとり、警察内部で行われている領収書偽造によるウラ金づくりを告発しました。彼は公務員の告発義務に従っただけです。その結果、優秀な警官でありながら、懲罰的な配転を受けました。これに対して彼は、裏金の実在を証明するために国家賠償訴訟を提訴。平成19年9月に一審で勝訴、組織ぐるみの裏金づくりの事実や、仙波さんの左遷に県警本部長が絡んだことを認定させました。しかし県側は控訴し、20年9月に高松高裁で敗訴。翌10月に最高裁への上告を断念して、仙波さんの勝利が確定しました。とは言え警察庁ならびに全国の警察は、未だに裏金の存在を認めていません。
このような大規模な不正が罷り通る構造はどうなっているのか、警察組織の体質はどうなっているのか、「正義の人」に伺ってみました。仙波敏郎さんを支える会世話人の東玲治氏にもご同席いただきました。」
仙波敏郎氏と故・東玲治氏
そして、このテレビ報道に対して、テレビ番組紹介欄は次のように述べている。
「仙波氏は2005年1月の記者会見で『裏金のことをふたした状態では警察には明日はない』と告発。これへの県警本部の報復は苛烈です。何も仕事がない新部署に移動させ、他の職員とは口もきけない完全な孤立状態におかれます。
その仙波氏を支える家族や友人。『正しいことをしている人間がなぜつぶされるのか』と多くの市民が仙波氏を支持し、応援する姿は感動を呼びます。
警察の裏金問題、いまなおそれを隠ぺいする警察組織の底知れぬ腐敗に迫る視点が希薄だったことはいかにも惜しい」と(
しんぶん赤旗5月11日付け)。
以上二つの事実から教育権力と警察権力の恐ろしさを見せられた。
憲法記念日から1週間。
ここまで民主主義が破壊され、公権力の思うがままに動かされている現状を見せられて、あらためて憲法を勉強し直し、これに基礎を置いた社会つくりを目指さなければならないことに驚く。
社会一般に、いじめや差別が横行する根源が教育現場や警察権力にあることを私たちは知らなければならない。非正規雇用の人たちの派遣切りが大企業によって平然と行われ、それを知らず知らずに受け入れてしまう風潮は心の奥まで生活の奥まで公権力の思い通りに動かされている証拠である。自らいじめや差別を受けない限り気がつかない鈍感さがそれである。
黙っていては公権力と同じ穴のムジナとなる。それへの抵抗のためにも普段からアンテナを張り、情報の深層を掴み、違和感を覚える体質を磨きたい。
戦後の長い歴史の中で、自民党やそれに加担してきた各政党の果たした役割がここにあったのでないだろうか。
いまこそ、政治を変えよう。
そこからはじめなければならない。
そして、
関係性を強めて数多くの触覚を鍛えよう。