『金利・為替・株価特報2009年5月9日号』に、今後の金融市場展望を記述する。
内外株価が3月9日以降に反発し、3月以降に発表された一部の経済指標に、経済状況の好転を示唆するものが混在し始め、先行き楽観論が広がっている。
『金利・為替・株価特報』では、短期変動の参考指標として、日経平均株価と円・ユーロレートの強い連動関係を指摘してきた。昨年7月以降、日本円は、ユーロ、ポンド、加ドル、豪ドルなどの主要通貨に対して急激な上昇を示した。
2000年から2007年にかけて、日本銀行が超金融緩和政策を維持したため、日本円は米ドルに連動して長期下落傾向を示してきた。その蓄積されたエネルギーの反動により、日本円が急激に上昇した。
日本円の急激な上昇は日本の輸出産業を直撃し、製造業を中心に激しい景気悪化が広がった。連動して日本株価が急落した。円ユーロレートと日経平均株価のチャートを掲示するが、日本株価は円ユーロレートの変動に連動した推移を示してきた。
『金利・為替・株価特報』では、両者の連動関係を指摘してきた。日本円が主要通貨に対して急上昇した昨年半ば以降、日本経済の急激な悪化についても警告を発してきた。
米国発のサブプライム危機に対応して、米国政策当局は迅速に、かつ大胆に対応を示している。日本の政策当局は1996−98年、2000−03年にかけて、不良債権問題が深刻ななかで、経済悪化推進の緊縮財政を実行し、事態を激しく悪化させた。
米国政策当局は日本の「失敗事例」を「反面教師」として活用し、今回、迅速な政策対応を示している。竹中平蔵氏は小泉竹中政権の政策対応を正当化したいのだと思われるが、残念ながら、竹中経済政策の失敗は明白である。
この点については、
4月12日付記事「「サンプロ」竹中平蔵氏「存在の耐えられない」誤謬」
をご高覧賜りたい。
@大型景気対策、A金融超緩和政策、B公的資金による資本増強策、が三位一体で実施され、株価が反発し、一定の安心感が広がっている。
しかし、先行きを楽観視するのは、時期尚早であると考えられる。三つの考察対象を示しておく。
第一は、IMFが4月21日に発表した国際金融安定性報告書(GFSR)で、米国・欧州・日本の金融機関が保有する不良資産の評価損が、2007年から2010年の4年間で4兆540億ドルに達する可能性があるとの見方を示したことだ。
また、金融機関が必要とする資本増強策が、今後1兆7000億ドルに達するとの見通しも示された。
第二は、この問題に関連して、IMFのストロスカーン専務理事が4月23日、IMF会合前の記者会見で「危機は終息には程遠いというのがわれわれの認識だ」と述べたことだ。
第三は、2007年以降の米国発の金融崩壊を的確に予測し続けてきた副島隆彦氏が、この4月30日に上梓された著書
『日米「振り込め詐欺」大恐慌』
で、NYダウが2010年にかけて3000ドル台にまで下落し続けるとの予測を示していることだ。
日米「振り込め詐欺」大恐慌―私たちの年金・保険は3分の1に削られる
著者:副島 隆彦 |
サブプライム危機に伴う金融機関の損失累計額予測をIMFは四半期に1度程度の頻度で公表しているが、予測値は時間の経過とともに拡大してきた。
米国政策当局は金融機関の資本増強策に充当するための公的資金枠をすでに100兆円以上確保してきたが、さらに170兆円もの資金が必要になるとの見通しが示された意味は重い。
NY株価は反発しているが、2007年以降の中期下落トレンドから脱したわけではない。
先述した二つのグラフが示すように、日本の株価は円・ユーロレートに連動して変動しており、日本円がユーロに対して下落する局面では日本株価が上昇しやすいが、日本円のユーロに対する下落が今後も持続する保証はない。
5月以降の経済・金融情勢については、十分な検討が求められる。『金利・為替・株価特報2009年59日号』では、この問題についての見通しを記述する。
副島隆彦氏の近著『日米「振り込め詐欺」大恐慌』は、米国オバマ政権の内情、米国金融危機伴う日本の損失、サブプライム金融危機処理の最終的な帰着点について、極めて示唆に富む分析を提示されている。
同書274ページには、私が巻き込まれた冤罪事件についての謀略的背景についても言及されている。同書はサブプライム金融危機の帰着点を見定めよと考えるすべての人に必読の書と言える。