月刊 日本 2009年 05月号 [雑誌]
販売元:ケイアンドケイプレス |
『月刊日本』2009年5月号が発行された。
巻頭特集「これは政治謀略だ!」
に小沢一郎民主党代表公設秘書逮捕問題を取り上げている。
小沢代表の政治資金管理団体は、政治資金収支報告書に「虚偽記載」したとして摘発の対象とされたが、森喜朗元首相、二階俊博経産相、尾身幸次元財務相をはじめとする多数の自民党議員の政治資金管理団体も、まったく同じ事務処理を行なったことが明らかになっている。そのなかで、小沢代表の政治資金管理団体だけが摘発された。
「法の下の平等」に反していることは明白である。白川勝彦氏が指摘するように、「検察、警察を使って政敵を追い落とす卑劣な行為」=「政治謀略」であることは明らかだろう。
私も巻頭特集に「権力の狙いは既得権益の死守だ」と題する小論を寄稿した。巻頭特集にはこれ以外に、
中村慶一郎氏による
「異議あり!「小沢=悪」報道」
鈴木宗男氏VS佐藤優氏による
「官僚たちの暴走」
の論文が掲載されている。
拙稿「権力の狙いは既得権益の死守だ」の小見出しを紹介する。
「政治謀略」が小沢代表秘書逮捕の本質
吉田内閣の系譜上に見る「秘密警察」
小沢氏主導の政権交代を警戒
「悪徳ペンタゴン」は何を恐れているか
今回の西松建設事件の本質を見極めることがまず重要だ。
今回の問題を最も的確に指摘し、謀略の成功を阻止することに多大な貢献をした郷原信郎名城大教授のテレビ出演が激減している。「悪徳ペンタゴン」が郷原氏のテレビ出演禁止の方針を示したのではないか。
郷原氏は、今回の東京痴犬地検国策特別捜査部の小沢氏秘書摘発を、「歴史的な検察の大失敗捜査」と断じている。政権交代の是非を問う決戦の総選挙を目前にして、野党第一党の党首の公設秘書を逮捕するのに、内閣総理大臣にその方針が伝えられないとは考えられない。
漆間巌官房副長官が「自民党議員には捜査が絶対に波及しない」と述べたことが伝えられ、問題化したが、麻生内閣が今回の摘発に密接に関与したことは明らかだろう。
拙稿にも記したが、麻生首相の祖父である吉田茂元首相は日本の秘密警察組織の創始者と言ってもよい存在である。共同通信社出身で現在名古屋大学大学院教授の春名幹男氏の著書『秘密のファイルCIAの対日工作(上・下)』(共同通信社)に、その経緯が記されている。
秘密のファイル(上) CIAの対日工作
著者:春名 幹男 |
秘密のファイル(下) CIAの対日工作
著者:春名 幹男 |
吉田首相は第三次吉田内閣が発足して1ヵ月半後の1949年3月にGHQ参謀第2部チャールズ・ウィロビー少将あてに以下の内容の書簡を送っている。
「日本の共産主義者の破壊的かつ反逆的な行動を暴露し、彼らの極悪な戦略と戦術に関して国民を啓発することによって、共産主義の悪と戦う手段として、私は長い間、米議会の非米活動委員会をモデルにした『非日活動委員会』を設置することが望ましいと熟慮してきた。」
この延長上に1952年7月、「破壊活動防止法(破防法)」公布と同時に、「公安調査庁」が発足し、同時期に「内閣調査室」が発足した。「内閣調査室」は吉田首相が自分の元秘書官で警察官僚の村井順に命じて設置した情報機関である、と同書は記している。
麻生首相が政権発足に際して、警察庁長官経験者の漆間巌氏を内閣官房副長官に起用した背景に、このような吉田茂内閣以来の日本の秘密警察の系譜が存在することを忘れてはならない。
小沢氏秘書逮捕の本質が「政治謀略」である以上、民主党は徹底して、毅然とした対応を示す必要があるのだ。4月27日付記事に既述したように、「テロ」への適切な対応を念頭に置かねばならない。
「テロ」の要求に従うことは、「テロ」を容認する行為であり、「テロ」を助長する行為なのだ。「政治謀略」の要求に従うことは、「政治謀略」を容認する行為であり、「政治謀略」を助長する行為なのだ。
「テロ」は多くの人命を人質にとり、要求に従わなければ人質の命を奪うと脅迫する。しかし、ここで「テロ」の要求に従うことは、その「人質」の命を救済するように見えるが、それと引き換えに、「テロ」を成就させ、「テロ」を助長することを通じて、国民全体を危機に晒すことを意味する。
麻生政権の「政治謀略」の要求に従い、小沢代表の辞任を容認することは、民主党が「政治謀略」に屈服することを意味する。民主党が「政治謀略」に屈服するなら、民主党は、今後、いつでも「政治謀略」によって攻撃されることを容認することになる。
国民にとっていま最も重要なことは、日本政治の刷新を実現できるかどうかである。「政官業外電の悪徳ペンタゴン」がなぜ執拗に小沢代表失脚を追求するのかを考えなければならない。
悪徳ペンタゴンは巨大な既得権益=政治利権を死守しようとしているのだ。この巨大利権=政治利権を破壊してしまう最大の脅威として小沢一郎氏を捉えている。これが、異常とも言える悪徳ペンタゴンの小沢氏攻撃の背景である。
名古屋市長選挙で民主党推薦候補である河村たかし氏が自公系候補に圧勝したことは、小沢民主党が依然として有権者から強く支持されていることを明確に示すものである。
千葉県知事選挙結果を執拗に放送したテレビメディアは名古屋市長選挙報道を最小限に留めている。仮に結果が逆であったらどうだろうか。朝から晩まで名古屋市長選挙報道一色になっていただろう。
小沢氏失脚工作活動に血眼になっているフジサンケイグループでは、新聞、タブロイド紙が懸命に名古屋市長選挙結果を否定しようとしている。ここまでくると、お笑いにしかならない。産経新聞がなぜここまで、懸命に小沢氏攻撃をするのか、特別な調査が必要であるとも感じられる。
名古屋市長選挙結果は、小沢民主党に対する有権者の支持が盤石であることを明確に示した。地方選挙結果は与党勝利、野党勝利がまちまちで、小沢氏秘書逮捕の後遺症はすでにかなり縮小していることを示している。
政治謀略を全面支援する人為的な情報操作の効果で、麻生内閣の支持率が小幅上昇し、麻生首相が得意の絶頂にいることは、民主党をはじめとする野党にとって好ましい現象である。総選挙投票日に向けて麻生首相は必ず、自ら墓穴を掘ることになるだろう。「天の差配」を甘く見るべきでない。
問題は民主党内の反党分子の存在だ。前原誠司氏は前原氏が党代表時代に民主党を解党寸前の状況にまで党勢を縮小させた「実績」を踏まえて発言するべきだ。自民党市場原理派と裏で通じているなら、正々堂々と民主党を離党して自民党に移籍するべきであると思う。
民主党執行部は、自信をもって小沢体制維持を宣言するべきだ。小沢氏が代表を退けば、日本政治の刷新は実現しない。野党を支持し、本格的政権交代を希求する有権者の眼力を低く見ることは許されない。
民主党が「政治謀略」に屈服して小沢代表を辞任させるとき、一部の無党派層の取り込みに成功するかもしれないが、同時に多数の、民主党支持者の核を失うことを忘れてはならない。
政党が「政治謀略」に屈服することは許されない。この基本を重視して、早期に明確な方針を定めることが肝要である。