内閣改造で安倍内閣の支持率が参院選前の水準に戻った。これまで、支持率30%を切って20%台に落ちた政権が再び国民の人気を回復するのは不可能と言われていた。今回のような事例を見るのは初めてだが、あれほどの不面目な惨敗を喫しながら安倍首相が辞任しないという事実も、それがそのまままかり通るという事実も、どれも信じられない異様な政治的光景であり、唖然として、批評する言葉も組み立てられないまま時間が経ってゆく。内閣改造の日の夜、日本テレビは特番を組み、スタジオに自民党支持の文化人と政治家を集め、安倍内閣の心機一転と再出発を演出して持ち上げ報道した。スタジオには野党議員の姿はなく、身内だけで完全に固めていて、まるで一年前の安倍政権誕生時の異常報道に戻ったかのような風景だった。国民が選挙で民意を示した実感を持つことができないのは、テレビが民意を正しくありのままに報道しないからである。テレビ報道だけを見ていれば、選挙の勝者が自民党なのか民主党なのか分からなくなる。
こういう言論状況に対抗しようとするとき、市民は何をすればよいのだろうか。ブログ左翼が連呼する安倍叩きやマスコミ叩きの軽薄なプロパガンダは、真夏のセミの鳴き声のように騒々しく暑苦しいだけで説得力として残らない。鬱々としながら、私が総理大臣に就任したときの臨時革命政府の閣僚名簿を作成した。われわれに必要なのは、現政権への安直な罵倒ではなく、それをリプレイスするイマジネーションである。
いい顔ぶれで、満足できる布陣である。「世に倦む」臨時革命政府のキャビネットとして過不足なく、今の日本で民主主義の革命政府を作るなら、これ以上の人選はないだろう。総務大臣を戸倉多香子にしようかと最後まで迷ったが、彼女には閣僚ではなく党幹事長を引き受けてもらう。私の内閣の目標は大きく五つある。第一に、これまでの新自由主義の路線を全面的に否定して、福祉国家の社会政策路線へと劇的に方向転換すること。社会保障制度と労働法制と税制の全てのシステムを95年時点まで遡って原状回復し、いわゆる格差社会の弊害を短期で一気に解消すること。すなわち新自由主義の打倒と格差社会レジームの転覆、「努力すれば報われる」分配システムの再構築。第二に、830兆円を超える財政赤字を短期で解消し、財政再建をパーフェクトに実現すること。地方交付税の水準を三位一体改革以前に原状回復し、地方自治体を財政破綻から救出すること。同時に、ドルから独立した東アジア共通通貨圏を構想、構築すること。米国債の売却と東シナ海ガス田開発の二つで金融独立と資源独立の新経済スキームを確立すること。
第三に、税金を無駄に浪費する日本型官僚組織を根本改造し、憲法が要請する行財政システムと予算制度を開発構築すること。国内のゴミと二酸化炭素の排出量を短期で半減すること。地球環境イニシアティブ(基準と技術)で世界をリードし、日本が開発した「環境技術知的財産権」の輸出販売を21世紀の国富戦略としてビルドインすること。第四に、右に寄りすぎ、米国への従属を深めすぎた国家外交と安保政策を全面転換し、戦後日本の平和主義外交へと原点回帰すること。ラディカルな9条外交へと舵を切り、アジア諸国からの信頼を回復すると同時に、<帝国>の恐怖支配に対抗して、国際世論のメインストリームを核廃絶と非武装主義にシフトさせる民族のエバンジェリズムを展開すること。将来の南北統一と両岸統一を目線に置き、さらに日米同盟廃棄の地平を展望して、六カ国協議の枠組を充実させ主導すること。第五に、失われた日本人の道徳と倫理を回復し、弱者をいたわり他者を思いやる心を蘇生し涵養すること。バブル経済とバブル崩壊後の新自由主義の隆盛によってエゴイズムの虜となり、自制心と自律心を喪失した日本人の本来の内面を修復すること。
以上、五つの目標をこの内閣は実現達成する。日本人の生活を取り戻し、失われた自信と誇りを取り戻す。知識と教養、反省と努力の生き方を復権させ、技術と学問への意欲と情熱を取り戻し、世界から尊敬される「地上の星」の日本人像を復活させる。それらの政策を遂行する上で最高のメンバーを閣僚に並べた。高齢者の閣僚も多いが、それはやむを得ない。内橋克人と永六輔にはこの内閣で死ぬ覚悟で働いていただく(過齢なる内閣)。第一の政策目標を担う中心人物は、言うまでもなく内橋克人である。新自由主義打倒の理論的リーダー。彼しかいない。内橋克人が理論指導して、菅直人が政策制度の設計を担当し、役所と予算を差配する。第二の政策目標は榊原英資に担当させる。ドルレジームからの脱却、円独立スキームをライフワークとして実現して欲しい。米国債売却と東シナ海油田開発の二つの計画で財政赤字の思考停止から日本人を解放してもらいたい。榊原英資が適任だろう。第三の政策目標は田中康夫を主担とする。経済産業大臣も兼務してもらってよい。特別会計の無駄の削減にも大鉈を振るっていただく。
第四の目標は天木直人、そして第五の目標の実行を担うのは本村洋と永六輔の二人である。第五の目標は特に重要だ。この内閣の閣僚はみな哲学者ぞろいだが、特に第五の政策目標の実現を担当する人間は優秀な哲学者でなければならない。この内閣の中で最も若い法務大臣は、首相である私が次を託す革命政権の後継者でもある。この法務大臣には国家公安委員長も兼務してもらっていい。内閣に入る人間は、右からも左からも人選したし、思想信条はそれぞれだろうが、入閣に際しては「憲法改正」や「死刑廃止」や「ポストモダン」や「ゆとり教育」は棚上げしてもらう。最後に、官房長官はこの人以外に考えられない。現在の日本の中で最高の人材。世界に誇れる最高の人材である。知性も人格も能力も年齢も容貌も。革命政府の顔を選ぶならこの人しかいない。私は、テレビに出てくる人間は例外なく呼び捨てにするが、この人だけは呼び捨てにできない。尊敬をこめて「国谷さん」と呼んでいる。この人を官房長官にできるから私は総理大臣をやりたいのだ。どんなに素晴らしい日本政府ができるだろう。想像するだけで楽しい。
あ...
大事な政権幹部の配置を一人忘れていた。カッシーニには国対委員長をやってもらうよ。元気か。