第2次大戦後、GHQの対日占領政策は1947年から1949年にかけて劇的な転換を示した。いわゆる「逆コース」と呼ばれる転換である。
背景に米ソ冷戦の勃発があった。
1947年3月 トルーマン・ドクトリン発表
1947年7月 ジョージ・ケナン
『ソ連の行動の源泉』
国家安全保障法成立
トルーマンが署名して成立した国家安全保障法により、国防総省(ペンタゴン)が設置され、中央情報局(CIA)が発足した。
春名幹男名古屋大教授の力作
『秘密のファイル−CIAの対日工作−』
秘密のファイル(下) CIAの対日工作
著者:春名 幹男 |
によると、
CIAは、機関発足8日後にまとめた第1号秘密分析文書「世界情勢見直し」に、
「日本はソ連極東部と対抗する“勢力圏”として発展する能力がある」
「米国の影響下で日本を復興させることができれば、極東でソ連に対抗できる」
との記述を示している。
米国はCIAを活用して、戦後の対日占領政策をどのように進展させたのか。CIAは1947年11月14日付秘密文書に、
「日本は米ソの間の相互脅威と相互不信を自己のために操ることができる立場になるだろう」
と記述していたことを春名氏は指摘している。つまり、日本は米国にとってもソ連にとっても、極めて重要な地理的位置を占めていたのである。日本の為政者に能力があったなら、日本は特定の国に隷従する非独立国の道を選択せずに済んだ可能性があったということになる。
戦後民主化政策は冷戦激化により大転換を示した。
1947年の新憲法下初の総選挙によって誕生した片山哲社会党内閣は短命に終わり、後継の芦田均内閣は昭電疑獄事件でつぶされた。
松本清張氏が『日本の黒い霧』
日本の黒い霧〈上〉 (文春文庫)
著者:松本 清張 |
日本の黒い霧〈下〉 (文春文庫)
著者:松本 清張 |
に昭電疑獄事件を記述しているが、昭電疑獄事件はGHQ内G2(参謀第2部)が主導した政治謀略であった疑いが強い。芦田内閣が倒され、対米隷属外交の祖である吉田茂氏が首相の座に返り咲いた。背景に米国の外交戦略の大転換が存在したことは間違いない。
1948年12月24日、A級戦犯容疑者19人が巣鴨プリズンから釈放された。このなかに、岸信介氏、児玉誉士夫氏、笹川良一氏などが含まれていた。
米国は造船疑獄事件で吉田茂内閣が倒れたのちに樹立された鳩山一郎内閣を歓迎しなかった。鳩山内閣は日ソ国交回復を実現し、シベリア抑留者の帰国を成し遂げたが、米国は鳩山内閣を警戒した。ソ連が北方領土を日本に返還し、琉球諸島の権益を侵害されることを恐れたのである。
鳩山内閣が総辞職したあと、政権を引き継いだのは石橋湛山内閣だった。石橋湛山首相は自主外交で米国にも自由にモノを言う姿勢を示したが、米国は石橋内閣を強く警戒した。
石橋湛山首相が病気静養のため、短期で総辞職したことが日本の命運を変えたと言っても過言でない。後継に米国と直結する岸信介内閣が誕生した。この岸信介氏の流れを引く対米隷従の正統が自民党清和政策研究会であると私は見る。
CIAの秘密工作について米国国家安全保障法は、
「国家安全保障会議が時に応じて指示するような機能と任務を果たす」
との規定を置いている。
この条文を根拠に、CIAは他国の選挙への介入を繰り返してきた。
1948年4月のイタリア総選挙では、トルーマン大統領が共産党勝利を恐れて反共グループへの資金援助を含むテコ入れを指示した。
1958年の岸内閣による解散・総選挙では、米国・CIAが「アデナウアー方式」と呼ばれる方法で、岸信介首相に対して秘密資金供与を行ったことが、米国資料公開によって明らかにされている。
他方で、CIAは日本の情報工作活動にも注力した。日本で最初のテレビ放送予備免許を取得した日本テレビ放送創設者の正力松太郎氏が、CIAからPODAMのコードネームを与えられていたことも明らかにされている。
日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」
著者:有馬 哲夫 |
米国にとっては、1949年の中国の喪失が衝撃だった。同年にソ連が核実験を成功させたことも、米国の対日介入を激化させる大きな要因になった。
米ソ冷戦は終結したと言われるが東西の体制相違は存続している。中国の経済力が飛躍的に拡大し、中国の軍事力も急速に強化されている。
米国の軍備再編のなかで、在日米軍の配置転換が計画されているものの、極東における米国のプレゼンスを維持することに対する米国の意志は極めて強固である。この文脈のなかで地政学上、最重要であるのが日本、韓国、台湾の従米政権維持なのである。
昨年の3・3事変(さんさんじへん)、本年の1.15事変(いちいちごじへん)は、いずれも小沢一郎氏を直接の標的とするものである。小沢氏に対する執拗な攻撃は2006年4月の小沢氏民主党代表就任時点からまったく変化がない。
メディアと検察を駆使して日本政治に介入するのが、米国の基本行動様式だと理解される
米国の行動の背景には、小沢氏に対する、
「政権交代を通じて日本政治刷新を実行する強い意志と極めて高い能力を備えている」
との人物評価(ファイル)が存在していると考えられる。
@官僚主権構造、A市場原理主義、B対米隷属、C政治権力による警察・検察・裁判所・メディア支配、D郵政米営化、のこれまでの基本路線を根幹から排除してしまう「危険人物」だと小沢氏は捉えられているのだ。
外交においては、「対米隷属一辺倒」が「米国にもモノを言う自主外交」に転換される可能性が高い。
小沢一郎氏をいかなる手段を用いてでも排除しようとする動機を最も強く保持しているのは、これまでの日本支配者=米国であると見るのが、最も説得力のある仮説だ。
小沢氏政治資金問題をこの視点から洞察し抜いて、米国の対日工作活動を打破することが、日本の真の独立への道である。主権者国民は、この「独立戦争」を勝ち抜かねばならない。