現職大臣の自殺という凶事で自己破綻寸前の安倍内閣(2):農相自殺を2チャンで予告したのは工作員か?

戦後新憲法が発布されてから自殺した現職国会議員は中川一郎(83衆自),松本幸男(83衆社),名尾良孝(91参自),新井将敬(98衆自),永岡洋治(05衆自),松岡利勝(07衆自)の6人で松本議員以外はすべて自民に所属する.(その他戦後の例としては45年に貴族院議員近衛文麿が戦犯容疑で出頭する直前服毒自殺している) 松本議員と名尾議員は病気を苦にしたものと見られるが,これ以外の自民党所属衆議院議員4人の場合はすべて政治絡みの何らかの葛藤に起因すると推定される.自殺手段はすべて首吊りということになっているが,他殺説(自殺教唆説を含む)が依然として「すべて」のケースについてくすぶっている.

松岡利勝 1945-2007 熊本県阿蘇町出身 鳥取大農卒農水省 赤坂議員宿舎
永岡洋治 1950-2005 茨城県古河市出身 東大法学卒農水省 世田谷の自宅 
新井将敬 1948-1998 大阪府曽根崎出身 東大経済卒大蔵省 ホテルパシフィック東京
中川一郎 1925-1983 北海道広尾町出身 九州大農卒農林省 札幌パークホテル

このうち新井将敬は大蔵官僚だが,それ以外の3人はすべて農林水産官僚出身であることが特徴的である.これは決して単なる偶然の一致ではない.彼らは言ってみれば「遅れた地域」から選出された議員たちであり,彼らの政治家としての苦悩はそれ自体民衆の苦悩を反映している.特に永岡洋治と松岡利勝の2人には強い共通点として,郵政民営化反対の立場から小泉改革支持に転回したことが挙げられる.彼らの「挫屈」とも呼ぶべき悲劇的な屈折はある意味で,彼らが代表する農山漁村の地方民衆と国際資本の代弁者と化した自公政権との深刻な亀裂・対立を表象していると言っても言い過ぎではないだろう.

『「右」も「左」もない,オレは「下」や』というポジションを取る喜八ログさんが,4月29日に「−牛肉と還元水、どっちが大事か−」と問いかけながら,『松岡利勝農水大臣を「国策捜査」から守れ!』というエントリを立てておられる.この記事は謎の憂国者「r」氏から寄稿されたものだが,緑資源機構談合などがまだあまり一般に知られていない時期に書かれていることから考えても,かなり内部事情に通じている方とお見受けする.「r」氏は,冒頭で「【お願い】誤解しないで最後までお読みください!」と読者に呼びかけている.一読をお勧めする.

松岡利勝をダーティな政治家として断罪するのはあまりにも容易であるが,もっと大きな政治を現実に動かしているダイナミックな力の構図を見るためには,少し離れた位置に立つ必要がある.国策捜査という言葉は佐藤優氏の著作「国家の罠」によって知られるようになったが,その「国策」が実は「売国」であるということにそろそろ気付いてもよいころだ.最初の例は田中角栄の脱米自立路線に危機感を抱いたアメリカが仕掛けたロッキード事件である.時の宰相を捕縛した東京地検特捜部はアメリカからリモートコントロール可能なツールであり,すべての国内メディアはそれに協力するプロパガンダ機関として総動員された.

私自身内政にはあまり詳しくないので,あちこち参照しながら5月28日に終結してゆく事象の流れを時系列で整理してみた.以下の線表(タイムライン)を見ると,皇太子をお招きして開催された5月27日のダービー当日(中央競馬会の主管官庁は農水省であり農水大臣は主催者代表である)をクリマックスとして,阿蘇の巻き狩りのように獲物を破滅へと追い込んでゆく大掛かりなオペレーションが軍事作戦よりも緻密に練り上げられていることが確認できる.

4/11
農林水産省生産局種苗課審査官が午前8時頃痴漢の現行犯で逮捕される
4/13 11
日の農水省職員の痴漢事件を産経新聞が報じる
4/27
緑資源機構を捜査中の地検特捜部が公正取引委員会が押収した証拠品を紛失
5/8
 紛失した証拠品を業者が焼却(溶解?).検事正など6名に厳重注意など懲戒処分
5/11
共同通信が地検特捜部の緑資源機構関連証拠品紛失をスクープ
5/18
松岡氏の事実上の秘書だった地元の損保代理店社長が阿蘇市の自宅で首吊り自殺
5/22
松岡事務所関係者が熊本の自宅で首吊りした事件を夕刊フジが報道
5/24
緑資源機構の林道整備談合容疑で地検特捜部は幹部2人を含む関係者6人を逮捕
    都内で鈴木宗男議員と会食,「上からの指示でしゃべれない」との苦渋を明かす
5/25
地検特捜部は機構九州整備局,宮崎地方建設部,松江地方建設部などを一斉捜索
    午前中閣議あり,午後は農林水産物等輸出促進全国協議会総会に出席
    名誉会長職は小泉純一郎前首相に遷る,農相のスピーチは精彩を欠くものだった
    松岡農相ダービー観戦をキャンセルし,夕刻地元熊本に帰郷
5/26
農水省総合食料局食糧貿易課課長補佐が午前0時頃強制わいせつ容疑で現行犯逮捕
    松岡農相母親とともに父親の墓に墓参.午後1熊本市内で散髪.
    ZARDの坂井泉水入院中の慶応病院で転落死
    2チャンネルに「松岡逮捕は絶対にない。そのまえに彼は、自殺するか、突然死する。
    「いやどうせなら月曜日の朝がいいか。。。一週間、松岡一色。。」の投稿が出る
5/27
日本ダービー(皇太子への招待状を出した主催者である松岡農相の姿は見えず)
    農水省北陸農政局福井農政事務所の消費流通課係長を下着窃盗の現行犯で逮捕
    熊本の松岡に飯島前秘書官から電話,長時間会話する.午後7時飛行機で東京へ
5/28
午前9時半飯島前秘書官から松岡に電話,松岡は居留守を使って電話に出ない
    午前10時赤坂議員宿舎の自室で秘書と打合せ,手を握り「世話になった,ありがとう」
    午前10時半もう一人の秘書からの電話に「世話になった」と応える
    午後020分頃松岡農相が自室で首吊り自殺しているのを秘書と主任警備員が発見
    午後042分救急隊が慶応病院に搬送,午後2時死亡確認の発表,検死は行われず
    伊吹文科相「死人に口なしという残念な状況になった」の不規則発言
    5/26の農水省食糧貿易課課長補佐のわいせつ容疑事件を朝日新聞が報じる
    5/27の農水省福井農政事務所係長の下着窃盗事件をNHK福井が報じる
5/29
森林開発公団(緑資源機構の前身)元理事山崎進一が自宅マンション駐車場で転落死
    政府は緑資源機構の林道整備など主要事業を廃止し事実上解体する方針を決定
5/30
党首討論放映.規制改革会議が機構の林道・農用地整備の主要2事業の廃止を提言
    フジTVで飯島前小泉首相秘書官が遺書の表書きを公開,「政局に影響はない」と発言
5/31
野党提出の議院運営委員長・厚生労働委員長・厚労大臣の解任・不信任決議案を否決
6/1
 未明に衆議院は保険庁解体法案・年金時効撤廃法案を可決
    赤城徳彦が後任の農林水産大臣に就任,農水省が緑資源機構の廃止を事実上決定

東京地検特捜部は「日本最強の捜査機関」であり,過去にはロッキード事件,リクルート事件、ゼネコン汚職事件その他多くの疑獄事件を扱い,最近ではライブドア事件や西村真悟衆院議員の弁護士法違反事件などを手がけているが,振り返ってみるといずれも国策捜査的色彩の濃厚な展開となっている.緑資源機構談合事件の捜査が極めて政治色の強いものであることは,5/11に発覚した地検特捜部による証拠品紛失事件から伺い知ることができる.林道測量コンサルタント業務を巡る官製談合事件で5/24に逮捕された緑資源機構前理事が公取委の立ち入り検査前に入札関係書類の証拠隠滅を指示していたことが明らかになっているが,こともあろうに事件を捜査する地検特捜部が証拠品を紛失するという椿事が発生した.

公正取引委員会が押収したダンボール200個の証拠品を返却するために地下駐車場で運搬車に積み込む作業を行った際,「1個だけゴミ置き場付近に置き忘れたため」――有リ得ナイ――清掃作業員がゴミと間違えて廃棄したというのだが,搬出作業を行ったのが4月27日で公取委は「同日中」に証拠品が足りないと指摘したのに対し,そのまま放置していた...清掃作業員が処分したのはそれから4日も経過した5月1日である...東京地検では責任者に一応形ばかりの懲戒処分を行ったが,最重要証拠品を意図的に選別して「ゴミ出し」したことは明らかだ.これはその時点から特捜のターゲットが松岡農相に絞り込まれていたことを物語る.

なぜ松岡農相なのか?もちろんターゲットとなるからには本人が国禁を冒しているという実績が必要条件だ.CIAを始めとする米国諜報機関はあらゆる手段とチャンネルを使って各国要人(政治家,高級官僚,企業家など)の個人情報を収集している.キャンプ座間には米国陸軍第500軍事情報旅団第441軍事情報大隊が駐屯し,日本国内での防諜・情報保全・対日情報収集(CIHUMINT)活動を行っている.アクセンチュア社は日本国内では既に出入国管理局システム,次期登記情報システム,検察総合情報管理システムなどの国家基幹システムに侵食しているが,中国では「南方週末」という経済週刊誌と提携して在内外華僑を含む中国・台湾系情報を洗いざらい収集している.すでに売国奴小泉の手にかかって日本国籍を失ったに等しい日本郵政公社は,10月の民営化で発足する「郵便局会社」の顧客情報管理システムの開発・構築・運営を米企業セールスフォース・ドットコムに一括して外部委託することを決めている.アクセンチュア社がこのセールスフォースとも提携関係にあることを知っても驚くには中るまい.

農相はこの条件を満たしている.それは彼が入閣したときからつとに指摘されてきたこと(黒い噂)でもある.しかし,ターゲットになっているのは松岡個人というよりはむしろ農林水産省全体と見るべきだ.これは過去に大蔵省・建設省・郵政省・社会保険庁などがたどってきたコースでもある.日本に対し農産物輸入「完全自由化」を強く求める欧米の多国籍食品企業。その攻撃の前面に立たされる農林水産大臣。(オルタナティブ通信)中でも狂牛病を巡る日米の激しい攻防戦の中で松岡農水大臣は善戦してきたのではないだろうか?行政調査新聞は『「マスコミが語らない松岡ショック」の裏側――松岡農相を死に導いたのは何か――』と題する論説の中で「(松岡の死によって)誰が得をするのか」と問い質している.以下に主要部を要約する.

松岡氏はかつて農林水産物貿易調査会長を務めるなど,農相就任前からドーハ・ラウンドの現場に立ち会い海外に人脈を構築していた数少ない実務派の政治家だった.今年1月ダボスで開催されたWTOドーハ・ラウンドに関する非公式会議で松岡農相は次の会合を東京で開くことを提案,ドーハ・ラウンドの再開が決定した.ダボス会議ではG6閣僚会合で「年末までの合意に貢献する」との閣僚コミュニケがまとまったが,これも松岡農相の力によるところが大きい.今年夏までの合意へ向けヤマ場に差しかかっているラウンドで日本に不利な情勢が生まれつつあるとき,これをはね返すことができるのは松岡利勝農相しかいない.

米国産牛肉の輸入問題でも国際獣疫事務局が米国を牛海綿状脳症の「準安全国」と認定したのを受け,米政府が正式に輸入条件緩和を要請してくることは火を見るより明らかであるが,農水省は消費者の反応との間で難しい判断を迫られる局面を迎えている.松岡農相さえ健在であれば米国の無法な圧力をはね返すことが可能だった.経済連携協定の推進をめぐっては,経済財政諮問会議などで米,EUとの交渉を主張する声が日本国内にまで強まっている.農林水産省としては急激な農業市場開放論に対抗する松岡氏の発言力に期待していた.また,バイオ燃料の利用拡大,農産物の輸出促進などは松岡氏が先頭に立って進めてきた政策だ.ひと言で言えば,松岡は日本の農政にとって絶対必要な切り札であり,それは同時に米国,豪州,EUなど対立する国々にとっては「最も不要で消えてほしい閣僚」だった.

松岡氏の事実上の地元秘書であった損保代理店社長が5月18日阿蘇市の自宅で首吊り自殺したという話は当然松岡氏の耳にも届いていたことだろう.夕刊フジがこのニュースを報道したのは4日後の22日のことだ.24日には東京地検特捜部が緑資源機構の林道整備のコンサルタント業務をめぐる入札談合容疑で森林業務部担当高木宗男理事と、下沖常男林道企画課長,受注上位4法人の営業担当者4人の計6人を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕して同機構本部の捜索を開始.翌25日には捜査は熊本・島根の両県に拡大し,機構九州整備局,宮崎地方建設部,松江地方建設部などを一斉捜索して多数の関係書類を押収した.網は閉じ魚は中にいて,あとは絞り上げられるのを待つばかりとなる.しかし...

今は国会の会期中であり,最悪でも参議院選挙が終わるまでは逮捕の可能性はなかった.25日金曜日,農相はダービーの観戦を秘書に命じてキャンセルし,墓参のため帰郷する.氏が死を決意したのがこの日であることは疑いない.この日午後グランドプリンスホテルの「赤瑛」で農林水産物等輸出促進全国協議会総会が開催され,小泉純一郎前首相が名誉会長に推戴される.大陸中国への日本米の輸出交渉に成功した松岡農相の功績はかくて日本農業に縁もゆかりもないどころか,むしろそれに敵対する勢力の代表選手によって踏みにじられた.

【追記】前便では5月26日に2チャンネルに書き込まれた「松岡農相自殺予告」の筆者のプロフィールを「東京地検特捜部内部かないしかなり近い人間,少なくとも急展開しつつある緑資源談合捜査の進捗状況をかなり精密に知り得る立場の人間」としているが,詳細に解析してみるとテキストの内容はすべて公開情報のみから類推できるものであり,内部情報は不要であることが分かる.また,論旨も書き込みの時間経過に従ってかなりのぶれがあり,ある一定の目的を持って書かれたものでないことは歴然としているので,情報かく乱ないしターゲットを心理的に動揺させることを狙った工作である可能性もゼロとして間違いない.しかしそれにしても,いかなる霊感によったのか?これほどの確度で的中させていることに関しては脱帽する.